救出作戦

　リモートワークで静かに？仕事をしていたら、ジジジジジ、バン、ジジジとベランダで音がした。なんや？と思ってサッシを開けると、ベタベタスリッパの横でアブラゼミがひっくり返っている。状況からすると飛んできてガラスにぶち当たって落ちたのだろう。ひっくり返ったまま動かない。仮死状態であろうか。まあ７日目なのかもしれないが。
　どうしよう。「そこ、暑いですよ。スリッパがベタベタになるくらい」と話しかけたところで伝わるまい。ベランダの前はマンションの中庭である。「せめて涼しいところで御臨終を迎えたらどうでしょう」といっても伝わるまい。
　燦燦と直射日光を受けているから干からびるかもしれない。しょうがいないので、ベタベタスリッパを履いて、箒と塵取りを手にアブラゼミに向かった。作戦としては箒で塵取りの中に入れ、そして中庭へ放るというものである。
　箒で塵取りに入れようとした瞬間、セミは目を覚まして、ターンと飛び上がり、ガラスにまたぶち当たったあと、物干し竿に落ちそうな体勢で捕まり、再び飛び上がって中庭へ落ちていったと思いきや、木に着地した。まあ作戦は失敗したとしても中庭へ出ていった。セミの余力はもうなさそうである。
　やれやれとクーラーの効いた部屋に戻りパソコンに向かうとメールが3通来ていた。