遠雷のマーチ

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 週の初めからかなりの豪雨であった。しかも夜中から思った以上に降り始めた。就寝しようと布団に入ってから、かすかに雷の音がし始めたのだが、通常とは異なる雷と感じたのは、バリバリという音がずっと聞こえて止まらないのである。「間」がなくバリバリ、バリバリと聞こえる。
 そしてその音が次第に大きくなっていくのである。確実にこちらに向かっているのを感じて、ホラー映画ではないが「来るぞ」と今まで体験したことのないような不気味さがあった。最も激しく降ったときには、雨と雷以外に何も聞こえないのである。雨戸があるのだが、出窓にはなく、そこからピカピカと雷鳴とともに光が入ってきた。
 滝のような雨が続き、まずいなと思ったのは午前3時頃である。パジャマのまま玄関から出て、門の屋根の下で外の様子を窺った。自宅前の道路の様子がどうなっているかで判断しようと思ったのである。玄関灯をつけて水が来ていないか確認した。
 幸い、水は来ていなかった。側溝の穴から少し水が戻ってきていたが、確実に流れているのを確認し、とりあえず水が上がることはないだろうと思った。神社の方の山で、雨と雷以外の音がしていないか耳を澄ませたが、こちらも変な音がしていなかった。
 時間が時間である。老人二人を避難させることもできないので、とりあえず家にいることにしたのだが、その時刻、市役所から、高齢の障碍者がいるため避難所開設の電話が入っていた。その時間は起きているのだが、全く受信音が聞こえなかった。朝になって留守録に気づいたのである。
 というわけで、遠雷が行進曲のように一定のスピードで休みなく迫ってくるという奇妙な体験をしたのであった。

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