118円の幸せ

 急いでいた。病院の受診が結構時間がかかったので、買い物も急いでいたのだが、そういう時に限って買っておくものを思い付く。ついでに重いものだったりする。
 ドラッグストアで年末の掃除グッズやケース入りの水を買ってレジでお金を払う時に、御屠蘇を見つけた。買っておこうとかごに入れ、一緒に清算した。
 エコバッグに入れ、水はカートを借りて駐車場へ持っていき、運んだあとまたカートを返して車に戻り帰って来た。夕食を作って、食べている最中に思い出した。
 「お屠蘇をエコバックに入れた覚えがない」エコバッグをひっくり返したが、やはりない。お店の買い物かごに入れっぱなしで帰って来たらしい。
 お店に行ってくるという私に対して家人は「それいくらなの?」と聞くので「118円」というと「もういいんじゃあないか」という。いやいや118円の金利として考えたら預金はなんぼじゃというあさましい考えの元、レシートを持って店に走った。しかし「もう、わからないかもしれない」と諦めもあった。
 すでに店員さんはアルバイトの学生に変わっていたが、レシートを見せて御屠蘇を入れ忘れた話をすると、忘れ物入れから探してくれた。しかし「御屠蘇ってどういうのですか」というのでレジの横にある箱を指して「あれです。あれを買いました」というと、忘れ物入れから出てきた。ビニール袋に入って日付と時間と「買い物かご取り忘れ」とメモが貼りつけてあった。
 ああ、正直者の国ニッポン!ありがとうよ、日本人。損をしなくてよかったというより、ちゃんと出てきたことの方が嬉しく、気を良くして満月を眺めながら帰ってきたのである。

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