深夜に思う

 会社員だった頃、朝はテレビを時計代わりにして支度していた。ニュースや天気予報はもちろんだが、15分のドキュメンタリーを見ることもあった。
 前にも書いたことがあるが、お気に入りは「グレートヒマラヤ撮影日誌」だった。二人の登山家が絶景を求めてトレッキングしていくのである。そう書くとあまりに簡単で感動は全く伝わらないが、8000メートル級の山々の見たことのない表情を求めて撮影に挑むのである。危険や忍耐を強いられる撮影にも関わらず、気負いがなく、ものすごいことを淡々とやってのけて、しかも明るく伝え見せてくれるところがとても気に入っていた。
 先日その登山家の一人である中島建郎さんがK2西壁に挑むドキュメンタリーが再放送されていた。録画してゆっくり見るのを楽しみにしていた。ところが、その番組を再生すると、冒頭で中島さんと共に登山していた方、双方が亡くなったことを知った。亡くなったのは西壁登山中の昨年の7月で、滑落によるものであった。K2に挑んで亡くなる直前までの記録が放映されていた。
 予期せぬことに驚きと喪失感で冒頭で録画を止め、見るのをやめようかと思ったけれど、見ないといけないようにも思い、深夜ひっそりと再生して最後まで見た。見終わっても信じられないような気分であった。最後の写真は二人の登山家がK2を後ろに満面の笑みを浮かべていた。何かに没頭し誠実に悩みながらも向かっていく姿は清々しく思えた。時に自然は容赦しないが、未踏のルートに挑んだふたりの登山家の山への尊敬と情熱は十分に伝わったように思う。
 テレビを消したあと、何故かいろいろ反省することが出てきて、自分の心根の小ささを改めて思い知ることとなった。

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