「怪獣ブースカ」をご存じだろうか。昭和時代の実写版のドラマで、通常の家庭内に被りもののぬいぐるみ(ブースカ)がいて、騒動を起こすコメディである。怪獣であるから怖いと思ったら大間違いで、おっちょこちょいでいつも騒ぎを起こして人に迷惑をかけるが、ブースカ自体は一生懸命で憎めない奴である。しょうがいないなあといって周りの人が許すのは、ブースカがいるだけで場が和むからである。
こんな潤滑油ブースカのような人が職場にいたりする。いや、いたという過去形であろうか。誰かを叱りたくても、直接なかなか言いにくいが、ブースカのような人を通して間接的に叱ることができ、角が立たずに円満に収まる。ある意味、ブースカの凹まない懐の深さによるところが大きい。
現在の職場の多くはこういう人をリストラしてしまい、ぎくしゃくしているところも多かろう。しかし、今回の家のリフォームで「ブースカ」を見つけた。
70代と思われる女性で、軽トラで現場を回り資材や廃材を運ぶ方である。小さな体にも関わらず、板や機械を運んで軽トラに乗せる。足りなくなると釘やネジを買いに走る。ところが、この女性は結構うっかり者のおっちょこちょいである。高齢のため、現場の方からは「ねーさん」と呼ばれており、誰も彼女のことを怒ったりしない。まさに「しょうがねえなあ」で済まされる。なぜだろうと見ていると、彼女はとてもフットワークが軽い。いわれたことも率先して行い、何度も同じ手間がかかっても嫌な顔ひとつしないのである。要はとても人がいいのである。
周りの人は「ねーさんだから間違ってもってくるな」とか「ねーさんだから来るのに時間がかかるな」という具合で織り込み済みなのである。普通だとイライラするはずであるが、本人の明るさと一生懸命さ、そしてとんちんかんの行動が笑いを誘う。織り込み済みなので、ねーさんが間違えないように周りもそれなりに配慮するのである。
ということで、職場には和みを生むブースカが必要で、笑って見ながら自分も間違いに注意しようとこっそり反省したりするのである。
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